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高度プロフェッショナル制度の対象者の年収、職種は?わかりやすく解説|中小企業の働き方改革

投稿日:  最終更新日: 2020年03月03日
「働き方改革」の一環として、2019年4月1日より導入された「高度プロフェッショナル制度」。高度な専門知識が必要な専門職に就いている労働者を対象に、労働時間規制の対象外とする仕組みとして、メディアでも取り上げられ大きな注目を集めました。 今回は、高度プロフェッショナル制度の概要や対象となる労働者の条件、導入手順などについてご紹介します。

高度プロフェッショナル制度の対象者の年収、職種は?わかりやすく解説

高度プロフェッショナル制度が導入された背景と目的

働き方改革は、多様な働き方を選択できる社会の実現を目指す改革で、労働制度の抜本改革を行い、企業文化や風土も含めて変えようとするものです。

働き方改革関連法案では、労働環境に関する法整備やガイドライン策定が実施されていますが、「高度プロフェッショナル制度」もそのひとつです。20185月に採択された「労働基準法改正案」のひとつとして新設され、201941日に施行されました。

高度プロフェッショナル制度は「労働時間ではなく、成果によって賃金が決定される制度」です。略称で「高プロ」とも呼ばれます。これまでの日本における一般的な働き方とは異なり「労働生産性」を重視した「能力主義の評価体制」ということができるでしょう。

なお、高度プロフェッショナル制度の導入は義務ではありません。制度の目的は「能力を存分に発揮して高収入をキープしつつ、メリハリのある働き方を可能にすること」にあり、従業員本人の希望に応じて、さらなる能力や意欲の発揮と自己実現のサポートをする制度とされています。

高プロ制度実現までの変遷

2007年には、成果によって賃金が決定される制度の前身として「ホワイトカラーエグゼンプション制度」が政府によって検討されましたが、法案は国会に提出されませんでした。過労死の促進や残業代カットを生むものとして批判を受けたことが背景にあります。

しかし、2014年の「第4回経済財政諮問会議・産業競争力会議合同会議」で、仕事の成果によって賃金が決定される働き方についての再検討が行われました。各企業でも制度導入の検討がなされるなど、ニーズと関心の高まりも見える中で制度化に至りました。

高度プロフェッショナル制度とは(制度の概要)

それでは、高度プロフェッショナル制度の概要について見ていきましょう。

制度には次のような4つのポイントがあります。

  1. 対象は「高度の専門的知識を要する業務に就き、明確な職務範囲と一定以上の年収」を満たす労働者
  2. 制度利用は「労使委員会の決議・労働者本人の同意」が前提
  3. 労働基準法の定める労働時間、休憩、休日・深夜の割増賃金に関する規定は「非適応」
  4. 「年間104日以上の休日確保・健康管理時間の状況に応じた健康・福祉確保」などの措置を講じることが必要

制度導入による企業・労働者のメリット

高度プロフェッショナル制度を導入することで、企業には次のようなメリットがあります。

・生産性の向上が期待できる
・残業代が不要になる

労働者には次のようなメリットがあります。

・自由度の高い労働時間・働き方が可能となる
・仕事や年収に見合う働き方によって、やりがいやモチベーションアップが期待できる

制度導入による企業・労働者のデメリット

一方、高度プロフェッショナル制度を導入する企業には、次のようなデメリットがあります。

・制度の非利用者が不公平な感情を抱く恐れがある
・長時間労働を防止するリスク管理が必要である
・導入手順が少々複雑である

労働者には次のようなデメリットがあります。

・長時間働いても残業代が発生しない
・成果と評価に乖離が出る恐れがある

制度の適用者となる対象者は年収1,075万円以上

高度プロフェッショナル制度の導入にあたり、重要なのが「対象労働者の範囲」の決定です。あらかじめ設置された労使委員会の決議によって、その範囲を明らかにする必要があります。

なお「常態として対象業務以外の業務に従事する方」は、対象労働者とはみなされません。加えて、下記2つの要件を満たすことが求められます。

  1. 職務の範囲について、労使間の合意に基づいて定められていること
  2. 支払い見込賃金額が年収1,075万円以上であること

高度プロフェッショナル制度の適用となる「対象労働者」の年収は「使用者から支払われると見込まれる賃金額が基準年間平均給与額の3倍の額を相当程度上回る水準として厚生労働省令で定める額以上であること」と定められています。国税庁平成30年分「民間給与実態統計調査」によれば、年間給与が1,000万円以上の人は、国内の全給与所得者の5%です。さらに対象職種で絞り込まれるため、高度プロフェッショナル制度の対象者は、非常に限られることがわかります。

なお、年収要件については以下のような留意点もあります。

  • 具体的な金額で確実な支払いが見込まれる賃金であること
  • 支払額が未確定な賃金(賞与、業績給など)は含まないこと
    ※最低保障額が設定されている場合は、最低保障額を含むことは可能
  • 支給額が減る可能性のある手当は含まないこと
    ※一定額が一律支給される通勤手当などは含むことが可能

上記のように、曖昧で具体的ではない支払いを賃金に含むことはできません。そして、いくら年収1,075万円以上という要件を満たしていても、「職務の範囲について、労使間の合意に基づいて定められていること」が満たさなければ、制度の利用はできません。

労使間の合意を受けるべき主なポイントは、「業務内容」「責任の程度」「求められる成果」の3点です。これらを「職務記述書」などの書面で明らかにし、労働者の署名も必要となります。「業務内容」「責任の程度」「求められる成果」を明確に定めないことで、「使用者の一方的な業務追加が可能になってしまう」「労使間で、思い描く成果・業務量に差が生まれてしまう」など、将来発生するトラブルをあらかじめ回避するためです。

制度の適用となる対象職種(対象業務)は5業種

制度の適用となる対象職種(対象業務)は5業種

高度プロフェッショナル制度の対象となるのは「特定高度専門業務」に従事する労働者です。「特定高度専門業務」は、労働時間と成果の関連が高くないと判断された、高度な専門職「5業務」のみに限定されています。

高度プロフェッショナル制度の対象となる5つの業務をチェックしていきましょう。

  1. 金融商品の開発業務
    金融工学的な知識を用いたオリジナリティーあふれる新たな金融商品の開発業務を指します。金融商品の販売、提供、既存商品の組み合わせのみの金融商品開発、データ入力・整理業務などに従事する人は対象となりません。
  2. ディーリング業務
    いわゆるファンドマネージャー、トレーダー、ディーラーなどの業務に従事する人を指します。これらの人から指示を受けて実施される業務、顧客からの注文取次、窓口業務などに従事する人は対象となりません。
  3. アナリスト業務
    中長期的な企業価値・市場などの調査分析を特定業界によって実施し、高度な投資判断レポート作成業務に従事する人を指します。一定時間のみの相談業務、データ入力・整理業務などに従事する人は対象となりません。
  4. コンサルティング業務
    事業展開の戦略企画をプランニングし、顧客へ提供する業務に従事する人を指します。調査・分析のみ、あるいは助言のみの業務、顧客の都合に時間を左右される相談業務、時間や働き方に裁量がない業務などに従事する人は対象となりません。
  5. 研究開発業務
    メーカーの要素技術研究、既存技術の組み合わせや応用を通じた新たな価値を創造する研究開発、 特許取得などへの可能性がある研究開発、製薬会社における新薬上市に関わる業務に従事する人を指します。技術的改善や新たなる価値の創造を伴わない業務、検査、品質管理、既存の生産工程のキープ・改善などに従事する人は対象となりません。

対象業務であっても「関連業務に携わっているのみ」という場合には高度プロフェッショナル制度の対象からは除外されます。在籍している部署の業務全体ではなく、あくまでも「制度利用者に従事させる業務」が対象業務であることが要件です。さらに、会社から具体的な業務時間など「具体的な指示」を受けているものについては、対象業務から除外されます。

高度プロフェッショナル制度の導入手順のポイント

最後に、高度プロフェッショナル制度を実際に導入する際の、6つの導入手順をポイントとともにご紹介します。

  1. 労使委員会の設置
    高度プロフェッショナル制度の導入でまず必要となるのが「労使委員会の設置」です。労使委員会は、その名が示す通り、労使間の話し合いの場となるだけでなく、制度運用における具体的な事柄を決議する場にもなります。
    以下が、労使委員会の要件の一例です。
    ・労使委員会の半数は労働者代表委員が占めること
    ・議事録の作成・保存に加え、労働者への周知を図ること
     など
  2. 労使委員会での決議
    高度プロフェッショナル制度の運営に必要な事項について決議を取ります。委員の5分の4以上の多数による決議が必要です。決議すべき事項は「業務に関する事項」「対象労働者に関する事項」についての以下10項目となります。
    ・対象業務
    ・対象労働者の範囲
    ・健康管理時間の把握とその方法
    ・与えるべき休日(年に104日以上かつ4週間を通じ4日以上)
    ・選択的措置について
    ・健康管理時間の状況に対応した健康・福祉確保の措置
    ・同意撤回についての手続き
    ・苦情処理措置の実施と具体的内容
    ・同意しない労働者への不利益な扱い(解雇など)を禁止すること
    ・厚生労働省令で定めるその他の事項
  3. 労働基準監督署長へ「決議」を届け出
    労使委員会で決議した内容は、労働基準監督署長へ届け出なければなりません。決議を所定の様式に基づいて提出していない状態では制度の導入はできません。
  4. 書面にて対象労働者の同意を得る
    対象労働者へ制度の概要や、労使委員会での決議内容、同意しなかった場合の賃金・評価制度、さらに同意の撤回に関することなどを書面で明示します。同意を得る時期や方法については、あらかじめ労使委員会で決議しておきます。
    その上で、同意した場合の対象期間と期間中の賃金額、さらに労働基準法第4章の規定が適用されなくなること(労働基準法が定める労働時間、休憩、休日および深夜の割増賃金についての規定が適用されなくなること)を書面で明示し、本人の同意に基づいた署名を受けます。なお、同意が撤回される場合についても、書面(撤回申出書など)と署名が必要です。
  5. 対象業務へ対象労働者を就業させる
    書面で同意を得られたら、対象労働者を対象業務へ就業させます。使用者は法定・決議に則り、健康・福祉確保や苦情処理の措置を実施することが求められます。実施すべき措置の中で、対象労働者に関する以下の3点については、所轄の労働基準監督署長へ定期的に状況を報告することが必要です。
    ①健康管理時間の把握
    ②休日の付与
    ③選択的措置および健康・福祉確保の実施
  6. 決議の有効期間の満了
    継続する場合は、導入手順の2番目(労使委員会での決議)から繰り返し行います。

企業、労働者双方にメリットがあるか適切に見極めて対応を

「高度プロフェッショナル制度」は、働き方の多様性や柔軟性を実現するために「働き方改革」の一環として制定され、201941日より試行されました。制度導入により、企業にとっては生産性向上、対象労働者にとっては自律した裁量での働き方やモチベーションアップなどが期待できます。

ただし現状は、年収や対象業務などの要件面から制度適用が可能な労働者は限られているのが実態です。制度の導入は義務ではありませんので、企業、労働者双方にとってメリットがあるかどうかを適切に見極めることが大切です。

この記事の情報は2020年03月03日のものです

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