名刺管理で見なおす働き方改革

働き方改革で残業規制が変わる|時間外労働の上限規制・中小企業は2020年4月から

投稿日:  最終更新日: 2020年03月03日
近年、国によって推進されている働き方改革の関連施策として、従業員の残業時間の規制にかかわる法改正が行われました。この「時間外労働の上限規制」は大企業を対象に2019年4月から施行されており、1年間の猶予期間が設けられていた中小企業も2020年4月から適用されます。 今回の上限規制により、企業や従業員にとって何が変わるのか、そのポイントをまとめました。

働き方改革で残業規制が変わる|時間外労働の上限規制・中小企業は2020年4月から

働き方関連法案で「残業時間」の上限規制が導入

「残業時間」(時間外労働)の上限規制は、2018629日に参議院で可決・成立した、いわゆる「働き方改革関連法」に含まれる施策です。

この施策では、次の課題を解決することを目的としています。

  • 長時間労働の是正
  • 多様で柔軟な働き方の実現

長時間労働は、「健康の確保」や「仕事と家庭生活の両立」を困難にし、若い世代が子供を育てやすい環境に悪影響を与えていると言われています。国の分析では、働く女性が仕事と子育てを両立できる環境が整備されていないことで、結婚や出産に消極的になり、少子化の原因となっていること。出産・子育ての時期に男性が仕事を優先するため、十分に家事や育児に参加できないことで女性負担が大きくなっていること。ひいては、女性のキャリア形成を阻害しているとしています。

これらの問題の解決を目指し、ワークライフバランスの取れた働く環境を実現するために、時間外労働の上限規制が行われることとなりました。

改正前は実質、残業時間に上限がなかった

改正前も、厚生労働省告示「労働時間の延長の限度等に関する基準」により、限度時間として月45時間・年360時間以内と上限が決められていました。しかし、法律上の規定はなく、厚生労働大臣の告示にとどまっており、違反時も行政指導のみでした。

また、労使間で「36協定」を結べば、以下の対応が1年間のうち半分(6回)まで可能でした。

  • 法定労働時間を超えて勤務する場合
    法定労働時間が延長可能
  • 臨時的に特別な事情が想定される場合
    「特別条項」付の協定を結べば、法令等の制限なしに時間の上限を設定可能

つまり、改正前は実質、残業時間に上限はなかったと言えるのです。

改正後は残業時間の上限が法律に定められ、違反には罰則も

改正後は、残業時間や例外などについて上限が法律で定められています。そして違反した企業に対する罰則の規定もあります。つまり改正後は、時間外労働の規制が強化されているのです。今までと異なる点に注意しましょう。

「時間外労働の上限規制」の具体的な内容

以下に「働き方改革関連法」によって定められた、時間外労働の上限規制の具体的な内容をご説明します。原則と例外の両方の数値がありますが、いずれの場合でも、法定労働時間を超える時間外労働は労使間の36協定の締結が前提となります。

原則:月45時間・年360時間以内

以下の通り、法定労働時間と原則の残業時間の上限が定められました。

◇法定労働時間
・1日8時間
・週40時間

◇残業時間上限(原則)
・月45時間
・年360時間

月に20日勤務の場合、平均すると1日の残業の上限は2時間強となります。つまり出勤してから労働時間が10時間強(法定労働時間8時間+残業上限2時間強)となったところで上限となります。

なお、原則である月45時間を超えることができるのは、年間6か月までとなります。

例外:年720時間以内・複数月平均80時間以内

臨時的な事情がある場合は、例外が認められます。ただしその場合にも、以下3つの上限の基準を守る必要があります。

  • 時間外労働・・・年720時間
  • 時間外労働と休日労働の合計・・・月100時間未満
  • 時間外労働と休日労働の合計・・・複数月平均80時間

「複数月平均」とは、2か月平均・3か月平均・4か月平均・5か月平均・6か月平均の全てを指します。いずれにおいても80時間を超えてはいけません。

これらの上限を超えて勤務させた場合は、違反として罰則があります。罰則について、詳細は後述します。

60時間超の残業代割増率が5割に

また、今後は、中小企業も含めた全ての企業に対して、残業の割増賃金の割増率が適用されます。これまでは大企業のみが対象で、中小企業に対しては猶予期間が設けられていましたが、202341日から廃止となる予定です。

割増率について、現行との比較は以下の通りです。

1ヶ月の時間外労働 60時間以下 60時間超
現行の割増率 25% 25%
新規の割増率 25% 50%

例えば、1か月に70時間残業させた場合の残業分の割増賃金は、60時間までは25%増・それを超える10時間は50%増で計算します(日勤の場合)。

式で表すと次のようになります。

1時間当たりの賃金×60時間×1.25+1時間当たりの賃金×10時間×1.5

なお、深夜時間帯(22時~翌5時)は、25%割増して支払うことが決められています。

したがって、深夜時間帯に月60時間を超えた残業をさせた場合は、深夜労働手当の25%と合計して75%の割増となります。

例えば、深夜時間帯に、1か月で70時間残業させた場合を考えます。このときの残業分の割増賃金は、60時間までは50%増(深夜労働25%+時間外労働25%)、それを超える10時間は75%増(深夜労働25%+時間外労働50%)で計算することになります。

式で表すと次の通りです。

1時間当たりの賃金×60時間×1.5+1時間当たりの賃金×10時間×1.75

罰則の対象者や内容

これまで時間外労働の上限については、限度基準告示によるものでしたが、法改正により、罰則付きで法律で規定されました。罰則の対象となるのは企業(使用者)のため、内容をしっかり把握しておかなければなりません。具体的な罰則の内容を見てみましょう。

罰則内容:6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金

さらに違反の程度によっては、厚生労働省により社名が公表されます。

具体的には以下のいずれかに該当する場合です。

  • 都道府県労働局長による監督指導で再度違法な長時間労働等が認められた企業
  • 違法な長時間労働を原因とした過労死を複数の事業場で発生させた企業

なお、公表は制裁ではないとされていますが、取引先への影響などが生じると考えられます。そのようなことにならないためにも、上限をしっかりと守ることが大切です。

適用の猶予、除外される事業や業務

法律で時間外労働の上限が規制されましたが、一方で猶予されたり、対象外となったりする事業や業務があります。具体的には次の5つが挙げられています。備考の内容も合わせて確認しておきましょう。

⾃動⾞運転の業務(具体的には、トラック・バス・タクシーの運転業務など)

5年間猶予(2024年4月より適用)

【備考】
・適用後の上限時間は年960時間
・将来的な一般則の適用については引き続き検討

建設事業

5年間猶予(20244月より適用)

【備考】
・災害時における復旧・復興の事業については、複数月平均80時間以内・1か月100時間未満の要件は適用外
・将来的な一般則の適用について引き続き検討

医師

5年間猶予(20244月より適用)

【備考】
・具体的な上限時間等(規制の具体的あり⽅、労働時間の短縮策等)については、医療界の参加による検討の場において検討・結論

⿅児島県及び沖縄県における砂糖製造業

5年間猶予(20244月より適用)

新技術・新商品等の研究開発業務

適用外

【備考】
医師の面接指導()、代替休暇の付与等の健康確保措置を設けることが前提
※時間外労働が一定時間を超える場合には、事業主は、その者に必ず医師による面接指導を受けさせなければならない

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中小企業の残業時間の上限規制の適用は2020年4月から

中小企業の残業時間の上限規制の適用は20204月から

この時間外労働の上限規制は、大企業には20194月よりすでに適用されています。中小企業には準備期間として1年の猶予が与えられていましたが、20204月より全ての規模の企業に対して適用されることになります。気を付けるポイントなどを下記でご説明します。

中小企業の定義

時間外労働の上限規制の適用が猶予されている中小企業ですが、該当する「中小企業」について、厚生労働省「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」で説明されています。「資本金の額または出資の総額」または「常時使用する労働者の数」のどちらかが以下の基準を満たしていれば、中小企業に該当します。

業種分類 中小企業基本法の定義
製造業その他 資本金の額又は出資の総額が3億円以下の会社又は

常時使用する従業員の数が300人以下の会社及び個人

卸売業 資本金の額又は出資の総額が1億円以下の会社又は

常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人

小売業 資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社又は

常時使用する従業員の数が50人以下の会社及び個人

サービス業 資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社又は

常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人

残業時間の上限規制で予想されるリスク

時間外労働の上限規制により、残業時間が見直されます。それに伴い、発生すると予想されるリスクについて、下記でご紹介します。法令を順守しながら、管理職や人事・総務担当者が気を付けるべきポイントを見てみましょう。

残業代が減り社員の労働意欲を減退させる

社員の労働意欲が減退する可能性があり、仕事にも影響が出てきます。残業時間が減ることに伴い、残業代が減り、手取りの給料総額が減るためです。そのため、購入したいものが購入できなくなり、会社への不満が募ります。

また、現在の残業代をあてにして、家のローンや車のローン返済を考えていた人は、返済額の見直しや働き方の見直しを迫られます。もっと稼げる会社に転職しようと考える社員も出てくる可能性も考えられます。

管理職に仕事が集中する

社員の時間外労働に上限規制がかかることにより、管理職に仕事が集中する可能性もあります。これには2つの意味があります。

  • 部下の残業を管理する仕事が増える
  • 部下に残業させないためのサポート業務などが増える

大企業に勤める管理職に対して行った2019年リクルートスタッフィングの調査によると、20194月の働き方改革関連法施行以降、12.8%が「自身の残業時間が増えた」(「とても増えた」3.6%・「やや増えた」9.2%)と回答しています。「増えた」と回答した人に理由を尋ねたところ、71.7%が「所属部署・課の管理業務」、58.5%が「部下のサポート業務」を挙げています。

管理業務が増える理由としては、部下の労働時間を以前より細かく把握することの必要性や、勤務時間帯の異なる部下へ個別連絡などが生じて管理業務の全体量が増えることが挙げられます。

残業時間削減のためにすべき対策

以上のように、働く上では従業員や管理職に対してリスクが生まれる可能性もありますが、従業員の健康的な生活や、多様で柔軟な働き方を実現するためには、残業時間を削減するために対策を講じる必要があります。また、時間外労働の上限規制が罰則付きの法律で規定されたため、企業は積極的に社内の残業時間を削減させなくてはなりません。そのためにすべき対策を2つ取り上げます。

残業時間を可視化する

残業時間を可視化することは、残業時間削減に有効です。残業時間を可視化することにより、社員が残業時間を意識・分析するようになります。その結果、現在の生産性や無駄な時間・作業が分かるようになり、次第に改善されていくことが期待できます。

残業時間の可視化は、以下の手順で行うと良いでしょう。

  1. 過去の労働時間を整理・把握する
  2. 過去の労働時間をもとにした会社全体の目標時間を設定する
  3. 部署ごとの目標時間を設定する
  4. 一定期間経過後、結果を開示する

また現在は、労働時間を把握するツールが多数開発されているので、それらのツールを利用するというのも一つの方法です。中には無料のツールもあるので、自社に合ったツールを探してみましょう。

さらには、就業規則を見直して、残業してよい時間を明記し、従業員に周知徹底することも効果的です。従業員の中に時間厳守の気持ちが芽生え、時間内に仕事を終える工夫を促すことが期待できます。

企業全体で業務効率化を推進する

個人レベルで業務効率化を図ろうとしても難しく、限られた範囲となってしまいます。そこで、企業が先導して業務効率化を推進し、会社全体の生産性向上と残業時間削減を目指すことが必要です。

具体的には、管理職や人事・労務担当者がリーダーシップをとり、次の施策を行いましょう。

  1. 現状の確認と制度の見直し
    残業時間・休日出勤の実態を把握し、関連する現行制度の問題点を洗い出す
  2. 実現のための仕組みづくり
    問題解決のための仕組みを作る(基準化・制度化・申請方法変更・評価の対象に追加など)
  3. 十分な告知
    方法・頻度・タイミングを考えて告知する
  4. 結果の発表と検証
    結果を全体に公表し、改善されたかどうか・理由は何かを検証する

これらは連続した施策なので、全てを実施してはじめて良い循環を起こし、残業時間の削減につなげることができます。

他企業が実践している具体的な施策

最後に、他企業がすでに実践している施策をご紹介します。企業における課題と対策を参考にする際には、下記のパンフレットが役立ちます。

◆参照:「働き方・休み方改善取組事例集」(厚生労働省)https://work-holiday.mhlw.go.jp/material/pdf/category1/170407_1.pdf

長時間労働や休暇取得に対する意識を全社的に変える

企業において、長時間労働の是正や、休暇取得の意識づくりに有効な方法はさまざまありますが、複数の施策を組み合わせて、社員の意識を変化させましょう。施策には、次のようなものがあります。

  • 連続した周知
    会社のトップが具体的な目標値や達成度などを随時告知
  • 仕組み化
    – ワーク・ライフ・バランス管理に関する項目を人事評価項目に追加
    – 年次有給休暇の計画的付与制度の導入
  • 研修
    – 管理職層に対するマネジメント力向上等を目的とした実習型研修の実施
    – 社員向けの教育・研修

ある企業では、有休消化100%に向けた取組として、1年目は朝礼で定期的に呼びかけ、2年目に定期的に社員ごとの取得率を発表・声かけを行いました。そして、見事に目標を達成し、社員満足度が向上するという効果も生まれています。

仕事の進め方を見直して業務効率化を図る

仕事の進め方を見直すことで、業務の効率化を図り、残業時間の削減につながる効果もあります。企業が仕事の進め方・取り組み方の見直しを実施して、効果を挙げた4つの方法をご紹介します。

  1. 業務の仕分け・優先順位付け
    受託する業務を仕分けし、採算性や特性による選別受注
  2. IT機器の無理のない活用
    IT機器の扱いに自信がない社員に向けた簡易マニュアルを作成
  3. テレワークの導入
    在宅勤務制度の導入
  4. 基準作り
    ・仕事の完成・成果の基準の明確化
    ・作業手順のマニュアル化・形式知化およびメンター制度の導入

企業により、課題や問題はさまざまです。まずは自社の課題や問題をしっかりと把握して、どのような解決方法があるのか、どのような仕事の進め方がよいのかを見直して、一つ一つ取り組んでみましょう。

自社に必要な対策を行う

時間外労働の上限規制について解説しました。中小企業も20204月から時間外労働の上限規制が適用されます。長時間労働を見直すために、企業それぞれの課題や問題点を把握し、改善することが必要です。そして、従業員の健康の確保や仕事と家庭生活の両立につなげていきましょう。

この記事の情報は2020年03月03日のものです
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