名刺管理で見なおす働き方改革

労働時間の管理は大丈夫?「労働時間の客観的な把握」が義務化|中小企業の働き方改革

投稿日:  最終更新日: 2020年03月03日
2019年4月1日より順次施行されている「働き方改革関連法」。その中のひとつに「労働時間の状況の把握」の義務化があります。これまでも給与計算や有給休暇付与などのために労働時間を把握する必要はありましたが、今回の義務化のポイントはどのようなものなのでしょうか? ここでは、法改正に至った背景や目的をはじめ、「労働時間の把握対象」となる労働者についての規定、対象となる企業規模などについて、具体的に解説していきます。

「労働時間の客観的な把握」が義務化

大企業・中小企業を問わず、労働時間の状況の把握が義務付け

働き方改革関連法のひとつが「労働安全衛生法の改正」です。201941日の施行により「労働時間の客観的な把握」が義務化されました。対象となるのは「ほぼすべての労働者」で、関連書類の保存義務もあります。

はじめに、改正労働安全衛生法の条文を見てみましょう。

「労働安全衛生法」第7章 健康の保持増進のための措置

66条の83(「面接指導等」の項目)

事業者は、第六十六条の八第一項又は前条第一項の規定による面接指導を実施するため、厚生労働省令で定める方法により、労働者(次条第一項に規定する者を除く。)の労働時間の状況を把握しなければならない。

「労働安全衛生」規則 第1編 第6章 健康の保持増進のための措置

52条の73(「法第六十六条の八の三の厚生労働省令で定める方法等」の項目)

法第六十六条の八の三の厚生労働省令で定める方法は、タイムカードによる記録、パーソナルコンピュータ等の電子計算機の使用時間の記録等の客観的な方法その他の適切な方法とする。

2 事業者は、前項に規定する方法により把握した労働時間の状況の記録を作成し、三年間保存するための必要な措置を講じなければならない。

66条の83における「面接指導」とは、一定の残業時間を超えた労働者に対して義務付けられている「医師による面接指導」を指します。「労働時間の状況の把握」は、適切な面接指導の実施にも不可欠な目安となっているのです。

また、条文からも分かるように、客観的に労働時間を把握する方法として、具体的にタイムカードやパソコンの使用記録と指定されています。

働き方改革関連法で労働時間法制が規定された背景

国が推進している働き方改革では、「労働時間法制の見直し」が大きなテーマとなっています。その背景には、ワークライフバランスを重視しながら「働く人の健康を守る」という目的があります。そのため、「労働時間の客観的な把握」の義務化は、労働基準法ではなく労働安全衛生法で定められました。

労働者の健康を守るという観点の法律ですので、大企業、中小企業など企業規模を問わず義務化の対象です。日本における長時間労働は国際的な問題となり、国連の社会権規約委員会が日本政府に対して「是正勧告」を出したのが2013年のことです。国連は、長時間労働と過労死が発生している日本の労働環境の実態を指摘し、長時間労働を防ぐ措置の強化と、事業者に対する予防効果のある制裁を適用するように強く求めました。

これにより、立法措置も見込んだ具体的な対策の必要性が増したことに加え、メディアでも社会問題として大きく取り上げられるようになり、働き方改革関連法の施行に大きな影響を与えたと考えられます。

労働時間の状況を適正に把握するポイント

法律に定められた要件を満たす形で労働者の労働時間を把握するためには、次の2点を理解しておく必要があります。

  • 適正とされる労働時間の記録・保存方法を知ること
  • 具体的な労働時間の考え方(何が労働時間に該当するのか)

詳しくは次項以降でも見ていきますが、まずは簡単に概要を把握しましょう。

【適正とされる労働時間の記録・保存方法】
・労働時間は使用者の「現認」によって確認することが原則
・労働時間は客観的な方法(タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間)での記録が必要
・労働日ごとの始業・終業時刻を、労働者ごとに適正に記録
・労働時間状況の記録は、3年間保存

【労働時間の考え方】
始業から終業時刻以外でも、使用者の指揮命令下に置かれた時間、業務上義務付けられた研修・教育訓練・学習などは「労働時間」に該当します。

企業が講じるべき措置の具体的内容

企業が講じるべき措置の具体的内容

2017年1月、厚生労働省のガイドライン「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」が策定、発表されています。「労働時間の適正な把握」を企業が講じる場合、このガイドラインを骨子にすると良いでしょう。

ただし、働き方改革関連法案によって新たに示されたガイドラインや制度もあるため(今後も法改正・新たなガイドラインが示される場合も)、関連法も考慮しながら対応する必要があります。

ここからは、現行法(改正労働安全衛生法)に則して「厚生労働省のガイドライン」で示された、企業が講じるべき措置の具体的内容を見ていくことにしましょう。

始業・終業時刻の確認と記録

各企業・事業所では、それぞれの労働者の「始業・終業時刻」をしっかりと確認し、記録しなければなりません。具体的には、一人ひとりの労働者に対して「労働日ごとの労働時間を客観的に記録する必要がある」ということです。

労働時間を客観的に記録する方法として、改正労働安全衛生法においては、先第52条の73の条文で見たように「厚生労働省令で定める方法は、タイムカードによる記録、パーソナルコンピュータ等の電子計算機の使用時間の記録等の客観的な方法その他の適切な方法」と明記されています。

「電子計算機の使用時間の記録」は、業務で使用しているパソコンのログインからログアウトまでの時間を記録することが、これにあたります。

自己申告制による始業・終業時刻の確認と記録

厚生労働省のガイドラインでは、労働時間を自己申告で把握することに関して「曖昧な管理になりがち」との懸念を表明しています。やむを得ず、自己申告制による始業・終業時刻の確認と記録を行う場合には次の点に注意し、措置を講じてください。

  • 自己申告制の対象になる労働者へ、適正な自己申告を行うために十分な説明を実施する
  • 労働時間の管理者に対して、適正な自己申告とその運用について十分な説明を実施する
  • 自己申告と実際の労働時間が合致しているかの実態調査を必要に応じて定期的に行って、報告の適正さについて確認をする。著しい乖離があった場合には労働時間の補正をする
  • 労働時間の正しい申告を妨げる措置(時間外労働の上限を超える申告を認めないなど)を講じないこと
  • 労働基準法が定める法定労働時間、時間外労働に関する労使協定(36協定)が順守されているか確認すること

賃金台帳の適正な調製

労働基準法(第108条および同法施行規則第54条)により、労働者ごとの労働日数、労働時間数、休日労働時間数、時間外労働時間数、深夜労働時間数といった項目を賃金台帳へ記入することが義務付けられています。

虚偽の記入を故意に実施した場合は、30万円以下の罰金が科せられる恐れがあるため、正しく記載しましょう。「賃金台帳への労働時間の記入」は、働き方改革関連法案の施行後も、引き続き実施しなければなりません。

なお、201941日の働き方改革関連法案の施行により「労働時間の把握対象」が以前よりも拡大・変更になっています。該当する対象者については最新の情報を確認するようにしましょう。詳しくはこの記事でも後述します。

労働時間の記録に関する書類の保存

もともと、労働基準法第109条において、賃金台帳など労働関係の書類を「3年間保存すること」とはなっていましたが、労働時間の客観的な把握を明確に義務付けるものではありませんでした。

2019年41日の働き方改革関連法案の施行により、「労働時間の状況の記録を作成し、労働時間の状況の記録を作成し、三年間保存するための必要な措置を講じなければならない。」(労働安全衛生規則)と、労働時間についての「客観的な把握」が明確に法制化されました。

3年間保存する書類には、次のようなものがあります。

  • 労働者名簿
  • 賃金台帳
  • 使用者が始業時間、終業時間を記録したもの
  • タイムカードなどの記録
  • 残業命令書やその報告書
  • 労働者が労働時間を記録した報告書

3年間の保存期間の起点となるのは、書類ごとに、最後の記載がされた日からとなります。

労働時間を管理する者の職務

厚生労働省のガイドラインによれば、部署の責任者など労働時間を管理する者の職務として、次のような事柄を挙げています。

  • 労働時間管理の適正化に関する事項の管理
  • 労働時間管理における問題点の把握
  • 労働時間管理における問題点の解消

具体的には、人事労務管理担当役員や担当部長が、労働時間について「きちんと把握できているか」、「過重労働(労使協定を超える時間外労働)が実施されていないか」などをチェックします。もし問題点がある場合には、その把握と対策の検討を行い、適正な管理措置を講じます。

労働時間管理における問題点の把握・解消に際しては、労使で話し合いをする「労働時間等設定改善委員会」を設置して、対応する方法もあります。同委員会は、「労働時間等の設定の改善に関する特別措置法」で例として挙げられている委員会で、労働基準法の労使協定に代わるものとしての効力が認められています。

労働時間等設定改善委員会などの活用

「労働時間等設定改善委員会」は、労使間における「労働時間等に関する事項の話し合い」を目的とした委員会です。

「労働時間等の設定の改善に関する特別措置法(労働時間等設定改善法)」で定められた組織で、企業(事業者)に対しては「委員会の設置をする等労働時間等の設定の改善を効果的に実施するために必要な体制の整備に努めなければならない」と明記されています。

労働時間等設定改善委員会と、その活用についてポイントをご紹介します。

  • 構成員は、事業主と、事業主の雇用する労働者をそれぞれ代表する者
  • 労働時間など(休日、年次有給休暇、育児・介護休業制度なども含む)の設定の改善に関して調査審議する
  • 1つ、または各事業所ごとに委員会を設置する
  • 要件を満たす「労働時間等設定改善委員会」構成員の5分の4以上の決議により、労働基準法に定める各労使協定への代替が可能

労働時間の把握対象には管理職や裁量労働者も含まれる

労働時間の把握対象となる人は、「高度プロフェッショナル制度の対象者を除く、全ての労働者」です。高度プロフェッショナル制度は「労働時間ではなく成果で賃金が決まる新しい働き方」で、今回、新設された制度です。

なお、労働基準法上は法定労働時間などの規制の適用を受けてこなかった「管理監督者」や「裁量労働制の適用者」についても、201941日の働き方改革関連法の施行により、労働時間の把握対象となっているため注意が必要です。

これは、労働安全衛生法における労働時間の把握が「労働者の健康確保」のために行われるものであり、管理職などについても、長時間労働による健康被害から守るための配慮が加えられているためと言えます。

最高裁判決が定義する「労働時間」の考え方

労働時間とは「従業員が使用者の指揮命令下に置かれている時間」を指します。

長らく労働基準法などで使用されていた「労働時間」という表現には曖昧な部分がありましたが、三菱重工長崎造船所事件で20003月に下された最高裁判決により、上記のように労働時間が定義されることとなりました。

労働時間を考える上で重要なポイントとなるのが「客観的に見て使用者から義務付けられた行為か」という点です。これは就業規則や労働契約よりも重視されます。

また、指示が明示的か黙示的かにかかわらず「使用者の指揮命令下に置かれている」と客観的に判断されれば、労働時間に該当します。

労働時間に該当するものには、次のようなものがあります。

  • 就業前後の、会社から着用を義務付けられた服装へ着替える時間
  • 業務終了後の、業務に関連した清掃や後始末の時間
  • 会社から指示があった場合、即時に業務に従事できるよう待機している時間(手待時間)
  • 業務上、参加が義務付けられた研修や教育訓練の時間

長時間労働による健康被害を避けるために適切な労働時間の把握を

「労働時間の客観的な把握」は、長時間労働による健康被害の発生防止という観点から、働き方改革の一環で義務化されました。

企業規模を問わず、すべての大企業・中小企業を対象に201941日から施行されています。 この機会に、義務化された内容を改めて確認して「対応がもれていた…」ということがないようにしましょう。

もしも適切な労働時間の管理ができていないという問題点がある場合には、社会保険労務士や弁護士など専門家のアドバイスを受けるなどして、早めに必要な措置を講じるようにしましょう。

この記事の情報は2020年03月03日のものです

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