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就業規則は?36協定は?フレックスタイム制の導入ポイントとメリット・デメリット|中小企業の働き方改革

投稿日:  最終更新日: 2020年03月03日
国が推し進めている働き方改革は、多様な働き方が選択できる社会の実現を目指し、労働制度の抜本改革を行って働き方を慣習や風土から変えて行こうとするものです。2019年4月から働き方改革関連法が順次施行されており、その中には「フレックスタイム制」の改正も含まれています。 従来の定型的な労働時間にとらわれない、柔軟な労働時間の選択を可能にする「フレックスタイム制」の特徴、法改正のポイントについて解説します。

就業規則は?36協定は?フレックスタイム制の導入ポイントとメリット・デメリット

フレックスタイム制とは

フレックスタイム制とは、あらかじめ企業が決めている一定期間の労働時間の範囲内で、労働者自身が毎日の労働時間、始業時刻、終業時刻を決めて、生活とのバランスを調整しながら働くことのできる制度です。

フレックスタイム制では、企業ごとに定められた必ず勤務しなければならない時間帯「コアタイム」と、指定の時間帯であればいつ出社・退社してもいい時間帯「フレキシブルタイム」の2つを設けることもできます。労働者は子育てや介護の両立、仕事以外の自己啓発などそれぞれのニーズに合わせて労働時間を決められ、メリハリのある働き方を選択することが可能です。

日本は現在、少子高齢化の進行による生産年齢人口(15歳~64歳)の減少という課題に直面しており、企業には労働力や優秀な人材の確保への対策が求められています。一方、働く人にとっては、育児や介護、地域社会活動や趣味などと仕事とのバランスが取れたライフスタイルへのニーズが高まっています。

こうした背景の中で、従来のルールや慣習にとらわれない働き方の選択肢のひとつとして「フレックスタイム制」が強化されました。これにより、固定化された勤務時間によって就業を断念していた人の就業機会が拡大するなど、働く人一人ひとりが存分に能力を発揮できる環境の整備が整えられることになります。

フレックスタイム制のメリット

次に、フレックスタイム制を導入するメリットについて見ていきましょう。

  1. ワークライフバランスの充実
    勤務時間を自己管理できるようになると、朝早く出社して夕方以降は自分の時間をしっかり取りたい、午前中に用事を済ませてから出社したいといったニーズを満たすことができます。
    出社時に発生する通勤ラッシュの負担回避や仕事をしながらの通院、銀行・役所での手続き、終業後の時間を勉強にあててスキルアップを目指すことも可能です。育児や介護といった家庭の事情を抱えている労働者にも対応でき、個々人の事情に合わせた働き方が実現しやすくなります。
  2. 生産性の向上
    労働者が個人で時間配分を管理することは、効率的な労働環境の整備にもつながります。また、結果として残業時間を削減し、生産性の向上にもつながると考えられています。
  3. 従業員の離職防止、優秀な人材の採用
    病気や結婚生活、子育て、介護などに直面した際、従来の働き方では社員は休職・離職を余儀なくされていました。フレックスタイム制の導入により、そうした社員の離職防止にも効果があると考えられています。また、社員の労働環境に配慮したフレックスタイム制の実績があれば、採用活動において、多様な働き方に関心を持つ優秀な人材の確保にも有効です。

フレックスタイム制のデメリット

フレックスタイム制にはメリットがある一方で、次のようなデメリットもあると言われています。

  1. 社内外での仕事の調整が困難
    フレックスタイム制を導入すると、「緊急の電話をかけたいけれど、担当者が出社していなかった」「この日に打ち合わせをしたいが、なかなか調整できない」といったすれ違いが起きやすくなります。社外だけでなく、社内で急なトラブルが発生した場合も、担当者が不在で対応が遅れるというケースも考えられます。フレックスタイム制を導入する際は、次のような対策を練り、業務上のすれ違いを防ぐ必要があるでしょう。
    ・各業務は複数のスタッフが対応できるようにする
    ・営業時間内は、各部門に必ず1人はスタッフが社内に在籍している状態にする
  2. フレックスタイム制の導入が難しい業種・職種がある
    一部の業種や職種の場合、フレックスタイム制を導入することで現場が混乱してしまうケースがあります。例えば「決まった時間に商品を生産し、お客様に送り届けるサービス」を提供する企業では、決まった時間に必要な従業員が勤務していないとサービスを提供できません。
    また、取引先との打ち合わせが多い営業職などは、相手の都合も考慮しなければならないため、フレックスタイム制を導入するには十分な検討が必要です。導入前に、自社の商材や業務内容の実態に合った制度なのかを検討しましょう。
  3. 自己管理が難しい社員の労働意欲の低下
    フレックスタイム制は出社・退社時間が一人ひとり異なるため、それぞれの社員の自己管理に任せることとなります。定型の労働時間に慣れている社員や、自己管理があまり得意ではない社員の場合、かえって労働意欲が低下する可能性もあります。

就業規則などへの規定

フレックスタイム制を導入するには、就業規則に「始業および終業の時刻を労働者の決定に委ねる」ことを定める必要があります。

下記に厚生労働省が公表している「フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き」に記載されている就業規則の例を掲載しますので、ぜひ参考にしてみてください。

(始業終業時刻、フレキシブルタイム及びコアタイム)

①フレックスタイム制が適用される従業員の始業および終業の時刻については、従業員の自主的決定に委ねるものとする。ただし、始業時刻につき従業員の自主的決定に委ねる時間帯は、午前6時から午前10時まで、終業時刻につき従業員の自主的決定に委ねる時間帯は、午後3時から午後7時までの間とする。

②午前10時から午後3時までの間(正午から午後1時までの休憩時間を除く。)については、所属長の承認のないかぎり、所定の労働に従事しなければならない。

出典:厚生労働省|「フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き」より

労使協定の締結(36協定)

労使協定(36協定)の締結では、主に次の内容を定める必要があります。

  • 対象となる労働者の範囲
    対象となるのが全労働者なのか、特定の労働者かを定めます。個人ごと、課やグループごとでもかまいません。
  • 清算期間
    労働者が労働すべき時間を定める期間のことを「清算期間」といいます。最大3ヵ月まで設定が可能です。清算期間は法改正により、これまでの上限「1ヵ月」から「3ヵ月」に延長されました。
  • 清算期間における総労働時間(清算期間における所定労働時間)
    清算期間内で労働すべき時間、いわゆる「所定労働時間」を定めます。
    厚生労働省「フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き」に、月単位の清算期間とした場合の法定労働時間の総枠が掲載されているので、参考にしてみましょう。

    1ヵ月単位 2ヵ月単位 3ヵ月単位
    清算期間の歴日数 法定労働時間 総枠 清算期間の歴日数 法定労働時間 総枠 清算期間の歴日数 法定労働時間 総枠
    31日 177.1時間 62日 354.2時間 92日 525.7時間
    30日 171.4時間 61日 348.5時間 91日 520.0時間
    29日 165.7時間 60日 342.8時間 90日 514.2時間
    28日 160.0時間 59日 337.1時間 89日 508.5時間
  • 標準となる1日の労働時間
    清算期間における総労働時間を、期間中の所定労働日数で割ったものが基準となります。清算期間内で有給休暇を取得した場合、その日は標準となる労働時間で働いたものとして扱う必要があります。
  • コアタイムとフレキシブルタイム(※任意)
    コアタイムとフレキシブルタイムは、法令上では必ずしも設ける必要はありません。ただし、コアタイム・フレキシブルタイムを設定する場合は、労使協定で、それぞれの開始時刻および終了時刻を定めることが必要です。

フレックスタイム制の注意点

フレックスタイム制の注意点

フレックスタイム制を導入する場合、大きく次の2つの点で注意が必要です。

  • 時間外労働に関する取り扱いについて
    フレックスタイム制は、日々の労働時間(始業時刻および就業時刻)を社員自らが決めることとなります。
    通常、1日8時間、週40時間と定められている法定労働時間を超過したぶんは時間外労働として扱われます。しかし、フレックスタイム制では、法定労働時間を超過した場合も、ただちに時間外労働にはなりません。逆に一定期間の労働時間が法定労働時間に満たない場合も、ただちに欠勤扱いとはなりません。
    フレックスタイム制における時間外労働は、清算期間(最大3ヵ月)を通じて、法定労働時間の総枠を超えて働いた時間をカウントします。
  • 総労働時間と実労働時間の過不足に応じて、賃金の支払いや控除を行う
    フレックスタイム制では清算期間内の総労働時間に応じて、過不足分の賃金の支払いが必要となります。例えば、清算期間が3ヵ月(92日)で、3ヵ月の実労働時間が530時間だった場合、
    530時間-525.7時間=4.3時間分について、超過分の賃金を追加して支払います。
    逆に実労働時間が520時間だった場合、不足している5.7時間分は賃金から控除するか、次の清算期間の総労働時間に加算するという対応が必要です。この場合、加算後の時間は法定労働時間の総枠の範囲内であることが条件となっています。

フレックスタイム制を導入した企業事例

フレックスタイム制の導入には、事前準備や円滑な労務管理が不可欠とはなりますが、多様な働き方の実現や従業員のモチベーション向上、業務改善への効果が見込めます。

ここからはフレックスタイム制を導入した企業・団体の具体例を見てみましょう。

フレックスタイム制の導入事例:化学工業系の民間企業

 A社は合成ゴム、合成樹脂などの石油化学製品の製造を行う企業です。仕事の効率化・社員の意識向上を目的に、1988年と非常に早い段階からフレックスタイム制を導入しました。当初は研究・開発部門の社員を対象に制度を導入し、1990年には対象を本社や支店、工場に勤務する日勤者に拡大しています。

導入に先立ち、同社では3ヵ月のテスト期間を設けました。そこでフレックスタイム制の運用や、社員間のコミュニケーションに問題がないか調査を行ったそうです。同時期に、制度を運用する中で生じると想定される問題についてはQ&A集にまとめました。まだまだ導入事例が少なかった時期だったからこそ、慎重に準備を進めたことがわかります。

フレックスタイム制は、社員一人ひとりの勤怠管理が難しいのが課題のひとつでもあります。A社ではその日の勤務時間帯を記入する「勤怠カード」を作り、毎日上司に提出することで対応しました。カードには清算期間の労働時間に対する累計時間も毎日記入します。これにより、社員も上司も労働時間を把握しやすくなりました。導入によって、社員からは健康状態や精神面などに、改善がみられたと報告されています。

フレックスタイム制の導入事例:福祉を中心とした事業を営む民間企業

B社は、福祉・文化・教育を中心に事業を展開する企業です。同社は1994年、コアタイムなしのフレックスタイム制を導入しました。対象となった支社の社員は約900人。B社は事業領域が広いことから、創造性を発揮できる環境づくりを目的に制度の導入を決定しました。

同社の取り入れた「コアタイムのないフレックスタイム制」は画期的なものでした。社員は午前8時~午後9時の間で、始業時刻・就業時刻を設定できます。この間で、月あたりの総労働時間をクリアするよう、社員は自主的に勤務時間を組み立てました。勤怠管理については、タイムカードを活用せず独自の「デイリー勤務記録シート」を作成。そのシートに社員が休憩時間と勤務時間を自己申告します。

一見放任主義に見えますが、B社は管理職による監督強化やシート記入を徹底しています。その結果、社員一人ひとりの生活が充実し、自己管理能力が向上したことで、仕事も能率的に進められるようになりました。

フレックスタイム制の導入事例:国家公務員のフレックスタイム制活用

国家公務員の中でも、フレックスタイム制の事例は多く報告されています。係長級の役職に就く30代の男性は、フレックスタイム制の導入で毎週火曜日を週休日として取得し、週休日の1日分を他の日の始業時間を繰り上げて時間の調整を行っています。

男性は夫婦共働き(共に国家公務員)であり、週2日、子供を療育センターへ連れて行きます。その時間の確保のために、フレックスタイム制を利用しました。以前は妻が育児時間を取得して子供の送迎も行っていましたが、子供の療育センターへの通園をきっかけに、フレックスタイム制へ移行。夫婦ともに仕事を辞めずに、家族の時間を過ごせるようになりました。

フレックスタイム制を導入して多様な働き方の実現を

2019年4月より働き方改革関連法が順次施行され、多様な働き方への注目度はさらに高まっています。こうした中、フレックスタイム制は、働く人一人ひとりのニーズに対応した働き方を実現する手段のひとつとなり得ます。

この機会に、自社の業態やサービス内容、労務管理の整備なども十分に考慮しながら、自社での導入メリットについて、具体的に検討してみてはいかがでしょうか。

この記事の情報は2020年03月03日のものです

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