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働き方改革で注目される「業務効率化」の真の目的とは?
働き方改革の目的のひとつは、日本企業の従来型の労働環境を改善することによって、働く人、一人ひとりのニーズに合った働き方を可能にし、ワークライフバランスの実現や働き過ぎを防止することです。
中でも労働時間の削減は、企業と従業員双方に大きな影響を与えます。従業員にとっても企業にとっても労働時間が短くなるため、限られた時間の中で業務効率を上げて働けるかどうかが重要なポイントになります。
業務効率化を実践するためには、まず自社の現状を把握する必要があります。後ほどご紹介する厚生労働省提供の「働き方チェックツール」などを活用して、適切な把握をし、自社の業務効率化に取り組みましょう。
業務効率化の目的は、企業風土を変えて社会全体の生産性向上をさせること
企業における業務効率化は、時として、業務にかかる費用や人的リソースのコスト削減や、単に業務効率を今よりも上げることにだけ焦点が当たりがちです。
しかし現在、国を挙げて取り組まれている働き方改革では、日本の企業風土や働き方の習慣そのものを抜本的に改革するための「業務効率化」の必要性が叫ばれています。
それでは、働き方改革による業務効率化の真の目的とはどのようなものなのでしょうか? 大きく分けると次の目的のために業務効率化に取り組むと言えます。
- 働き過ぎを防ぎ、一人ひとりの多様なワークライフバランスを実現するため(長時間労働の是正)
- 将来、労働人口減少を迎えても事業継続が可能な環境の整備をするため(少子高齢化への事業対応)
- 企業文化・働き方を変える新しい手法の導入や環境整備をすることで、多様な働くニーズに応えられるようにするため(働くニーズの多様化への対応)
- 魅力ある職場環境づくりをすることで、優秀な人材確保ができるようにするため(人手不足の解消)
以上のように、働き方改革を効果的に進めるためには、業務効率化によるコスト削減だけに目を奪われないように注意する必要があります。
経営改善によってアウトプット(売上)を増やし、イノベーションや新たな事業を興すなど生産性を向上させ、ひいては、不合理な慣習や企業文化を変革する手段として取り組む視点が大切です。
「働き方・休み方改善指標」診断ツールを使って自社の現状を無料診断してみよう
長時間労働は業務効率化の妨げになるだけではなく、働く従業員のモチベーション低下にもつながります。
厚生労働省が提供しているWebの無料診断ツール『「働き方・休み方改善指標」診断ツール』を使って、自社の働き方が無料で診断できます。企業向け、社員向けの診断が用意されています。
◆「働き方・休み方改善指標」診断ツール https://work-holiday.mhlw.go.jp/diagnosis/
【診断ツールで状況診断ができる項目】
・自社のタイプ(働き方・休み方の課題の有無)
・自社の働き方、休み方の現状把握レーダーチャート
・自社の働き方、休み方に関する取り組み状況チェックリスト
・年次有給休暇の平均取得率度数分布(他社と比較) など
診断後は結果をもとに、自社に合った取り組み提案や目標設定、体制づくりなどのアドバイスを見ることができます。
ITツール活用による経営課題の解決、成功事例のアイデアまとめ
ITツールを活用することで、さまざまな業務効率化を実現することができます。業務内容や働き方を変えるだけでなく、次のような経営課題を解決する解決策ともなり得ます。
- ビジネスの付加価値創出
- 業務上のムダの解消・削減
- 意思決定の迅速化
- 業務の質の向上
- 人材不足の解消
各テーマ別のアイデアと成功事例について、次項でご紹介します。
クラウドサービスやモバイル端末の活用で、経理業務を大幅削減
従業員11名の社会保険労務士法人の事例です。
この企業は全国各地の企業や病院などの医療機関、学校法人などに向けて社会保険労務士サービスを提供しています。
これまで、毎月150社の顧客に対して請求書作成から発行・郵送(メール発信)、入金確認や経費精算などの経理業務を全てスタッフの手作業で行っていました。日々の経理業務に加えて毎月発生する業務のため、必要な業務に十分時間が使えないことがネックです。そのため、経理業務にかかる時間や手間、人件費の削減の早期解決が望まれていました。
そこで、経理業務のIT化による業務効率化を図る目的で、クラウド会計サービスの導入を決定しました。このツールでは、営業業務と会計業務、給与業務間でデータ連携を行うため、データの自動仕分けや自動消込など時間がかかる作業を自動化することができます。
同社は、クラウド会計サービスを導入することにより、請求の自動作成・郵送(メール配信)、入金管理業務の自動化を実現しました。また、経費精算では、申請、領収書の写真撮影、チェック機能から承認までをスマートフォン上で完結することができるため、いつでもどこでも経費精算が可能になりました。
このクラウド会計サービス導入により、これまで経理業務にかかっていた時間が今までの3分の1でできるようになりました。経理専任の担当者も0人にできたほか、担当者が不在でも仕事が止まることがなく、担当者が異なっても同じような業務処理ができることなどで、生産性が大きく向上しました。
【業務効率化のポイントまとめ】
・手作業の経理業務をクラウドサービスで自動化
・経理業務の時間を削減し、専任担当者が0人に
・業務時間は従来の3分の1に
・削減した時間は、他の業務に振り分け生産性が向上
情報共有にクラウドサービスを導入し、ペーパーレス化と作業時間66%削減を達成
従業員9名の食品通販を行う会社の事例です。
創業当時はインターネットの通信販売を行う会社として設立されました。その後、自社のノウハウを活かしてWebサイト制作やECサイト制作も手がけるようになり、現在では、オンラインマーケティングやクラウドインテグレーターとして活躍しています。
同社では当初、人手不足を解消すべく業務効率化を目指していましたが、在宅ワーカーの採用も始めたため、情報共有のデジタル化を目的にITツールの導入を決定しました。在宅ワーカーとオフィス勤務者との情報の一本化、手書き伝票の廃止(ペーパーレス化)、タイムレスなコミュニケーション、リアルタイムでの情報更新などの業務改革のため、Googleのクラウドサービス「G Suite」を導入しました。「G Suite」は、スマートフォンやタブレット、パソコンなど、さまざまな端末に対応し、いつでもどこでも共通の書類を見ながらWeb会議を開くことができます。音声会議やインスタントメッセンジャー、動画配信なども積極的に活用しました。
情報を一本化した結果、今まで紙ベースで出力していた資料もペーパーレス化をはじめ、業務のさまざまなシーンで発生するムダな時間を削減し、作業時間を前年比で66%削減することに成功しました。これにより、業務効率が改善され、機会損失を防ぐなど生産性が向上しました。
【業務効率化のポイントまとめ】
・在宅ワーカーとオフィス勤務者の情報共有のためのクラウドサービスを導入
・情報の一本化により、ペーパーレス化を実現
・作業ロスがなくなり、作業時間を66%削減
・業務効率が改善され、機会損失を防ぐ結果に
業務内容のリアルタイムの可視化により、安全強化とコミュニケーション活性化
従業員数85名の土木建築業を営む会社での事例です。
創業以来、道路工事や下水道工事、電力工事など、主に地域インフラ工事を行う会社です。地域密着型の企業として地元の発展に貢献しています。作業現場では従業員の安全確保が最大の課題ですが、施工事例の少ない工事では、危険箇所の予測が難しいのが現状です。しかも2次元の設計図の把握は熟練者でないと難しく、現場の事前把握が困難でした。その上、もともと建築業現場は閉鎖的な傾向にあり、従業員同士、対地域住人とも交流が少ないのも課題でした。
そこで、事故防止を目的に、現場の事前把握が簡単にできる3次元図面による工事現場の可視化ができるICT(情報通信技術)「3次元仮想現実」(3DVR)の導入を検討しました。この技術では、設計図を従来の2次元から3次元化し、3DメガネによるVR(仮想現実)技術を使うことで、実際の現場との違いをリアルタイムで確認することができます。
危険箇所を現場の従業員全員が共有することで、安全確保だけでなく、作業員同士のコミュニケーションも増えて業務が円滑に行えるようになりました。さらに、地元住人に対しての土木工事の説明会でも活用されているため、素人でも工事の全貌を容易に理解できるようになりました。
ICT(情報通信技術)の活用により、施工の安全確保や納期短縮を実現し、コミュニケーションツールとしても役立ちました。
【業務効率化のポイントまとめ】
・工事現場の可視化を実現するICT(情報通信技術)を導入
・リアルタイムに危険箇所情報を現場従業員で共有し、安全確保を強化
・把握にかかる時間を削減
・意思疎通や意見交換、コミュニケーションが活発化
クラウド型の名刺管理アプリで、戦略的な営業・マーケティング活動の基盤を構築
従業員数61名の産業機器向けのコネクタ、ケーブル類の製造・販売などを行う会社の事例です。
同社はスイスに本社を置く企業の日本法人で、世界でトップクラスの高性能・高信頼性のコネクタソリューションを提供しています。同社では2019年2月、取り組みが遅れていたITによる業務効率化とビジネス価値の向上を目的に「IT推進プロジェクト」を立ち上げ。IT活用による業務プロセス、顧客とのコミュニケーションの在り方を見直します。その中で、営業担当者やマーケティング担当者の業務のムダを省いて、本来の業務により多くの時間が割ける環境をつくることを目指します。
これまで、営業活動などで行われる名刺交換と、その管理は、属人的で手間のかかる作業でした。例えば、営業担当者は名刺をデータ化するために、その都度、名刺のコピーをとり、データ入力担当者へ渡してデータ化するという方法をとっていました。また、展示会運営では、交換した名刺情報を表計算ソフトへ手入力していて、見込み客へのフォローをするのに3~4日を要していました。
クラウド型の名刺管理アプリを導入した結果、顧客情報は、名刺情報をスキャンするだけでデータベース化され、全社で共有できるようになりました。これにより、データ入力にかかっていた作業時間が大幅に削減され、コピー用紙の節約も実現。また、担当者が違っても、過去につながりがあった会社かどうかの情報を検索する時間や、展示会で名刺交換した見込み客のフォロー時間が短くなり、営業的なアプローチの迅速化へとつながりました。
マーケティング面では、顧客企業の営業、マーケティング、購買、設計など各部門担当者との人脈を全社で共有できるようになったことで、顧客の組織全体を可視化した提案検討がしやすくなりました。顧客からの発注を待つだけでなく、それぞれの顧客組織に適した積極的な提案営業活動を拡げるなど、営業戦略の強化・実践に役立っています。
【業務効率化のポイントまとめ】
・属人的だった名刺管理をクラウド型の名刺管理アプリでの管理へ移行
・全社規模で人脈や顧客情報を共有化
・名刺情報検索に要していた時間を89%削減
・各顧客に適した担当者の振り分け作業に要していた時間を60%以上削減
・展示会で獲得したリード情報の即時活用を実現
・顧客分析の効率化で、顧客ごとに最適化されたアプローチを実現
ビジネス課題を解決するITツール・アプリ機能チェックリスト
最後に、現在、企業が悩んでいる具体的な経営課題に対応するITツール・アプリの機能をご紹介します。経営課題をチェックして、自社にはどのようなITツール・アプリが導入できるのか検討してみてはいかがでしょうか?
ビジネス用のクラウド型ITツール・アプリを導入するメリット
ITツールやアプリの導入には、独自開発やパッケージソフト購入などいくつか方法がありますが、次に挙げる理由から、クラウド型で対応できる業務から導入するのがおすすめです。
- 初期導入費、ランニングコストが低い
- 試用版などで購入前に使い勝手を確認できる
- データ連携を行うことで、入力業務が削減できる
- 機能アップデートなど自社対応が発生しない
新規顧客開拓、成約率など売上に関する悩みに対応
- 課題:新規顧客を増やしたい
売上に関しての悩みで最も多いのが新規顧客の開拓です。ホームページ作成やECサイト作成、予約管理システム、問い合わせ機能のITツール・アプリで対応できます。
- 課題:リピート顧客を増やしたい、成約率を上げたい
顧客の趣味嗜好、年齢、性別などの顧客管理ができる、営業支援ITツール・アプリがあります。
名刺情報のデジタル管理・情報共有ができるSansanの「(https://jp.sansan.com/introduction/ai-meishi/)は、取引先情報を資産として社内共有することで営業力を強化できます。
利便性や提案精度の向上など顧客満足度向上に関する悩みに対応
- 課題:顧客に合わせた商品やサービスを提供したい
顧客満足度向上で多いのが、顧客のニーズに合った商品やサービスの提供です。対応するITツール・アプリには、顧客管理システムや営業支援システムがあります。
顧客に、自社の商品やサービスを継続的に支持してもらい、顧客ロイヤルティ(顧客ロイヤリティ)を高めることは、売上向上につながるマーケティング戦略です。
Sansanの「Sansan Date Hub」(https://jp.sansan.com/introduction/customer_data/)では、名刺の情報を軸に社内のデータを整理・統合することで、顧客に合わせた最適なマーケティングが可能になります。
- 課題:顧客の利便性を向上したい
顧客の利便性向上には、いつでもどこでも予約が可能な予約管理システム、電子決済などが手軽に導入できる決済ツール・アプリがあります。
業務の属人化や情報共有などに関する悩みに対応
- 課題:専門の知識を必要とせず作業を簡単にしたい
給与計算や経費精算、労務管理などは、知識と時間が必要な作業です。専用の会計管理、給与計算、人事労務管理用のITツール・アプリがあります。
- 課題:担当者間で資料を共有化したり、リアルタイムで意見交換をしたい
円滑に業務を進めるために必要な担当者間の情報交換は、ビジネスチャットやグループウェアなどの導入がおすすめです。必要な資料の共有や、リアルタイムでのやりとりもできます。
Sansanの「同僚コラボレーション」(https://jp.sansan.com/introduction/collaboration/)では、部門を超えたコミュニケーションをスムーズに行え、社内連携を活性化が可能です。
- 課題:在宅勤務やフレックス制など時間や場所にとらわれずに働きたい
さまざまな勤務形態に対応し、時間や場所を限定しない働き方を可能にするものには、勤怠管理システムやビジネスチャット、グループウェアなどのITツール・アプリがあります。
問い合わせ省力化、経理・労務管理の効率化など利益率向上に関する悩みに対応
- 課題:余剰在庫を減らしたい/案件別の収支を把握したい
店舗業務のレジ締め作業、売上・在庫管理の自動化とデジタル管理ができるPOSシステム、客席から従業員の呼び出しや注文がデジタル端末で可能となるオーダーエントリーシステム、販売管理システムなどのITツール・アプリがあります。
- 課題:問い合わせや予約受付を省力化したい/間違いをなくしたい
予約管理システム、複数の予約サービスを一元管理できるサイトコントローラーなどのITツール・アプリがあります。
- 課題:受発注作業を省力化したい/間違いをなくしたい
システムの連携による情報の一元化により、ムダな作業の削減や情報伝達のロスをなくすことで、顧客満足度の向上も図ることができます。POSシステム、販売管理システム、請求書発行・管理などのITツール・アプリが対応しています。
- 課題:経理や労務管理を省力化したい/間違いをなくしたい
専用の会計管理、給与計算、人事労務管理用のITツール・アプリがあります。
Sansanの「Sansan Plus」(https://jp.sansan.com/introduction/plus/)では、反社チェック、採用、契約管理などの人事総務業務をサポートする連携機能があります。
- 課題:売上の把握や予測を簡単にしたい
バラバラな情報管理手法をシステムで統一することで、素早い経営判断が可能になります。顧客管理、営業支援、販売管理、会計などのITツール・アプリがあります。
ITツールを積極活用して、劇的な業務効率化と働きやすい業務環境の実現を
国を挙げて進められている働き方改革に企業として取り組むためには、法規制への対応だけでなく、労働環境の見直しや、業務効率化が不可欠です。
業務効率化を実現するIT技術の普及・発展により、自社の業種や業務内容に合ったITツールの活用が検討しやすくなっています。まずは自社の課題を把握し、分析結果から明らかになった課題や困りごと、今後の事業展望などを照らし合わせ、最適なITツールを選ぶことが大切です。